安曇野ワイナリー

誕生物語

これから始まるワイナリーの歴史 物語を紡ぐ人々の想い

7月23日、澄み渡る晴天の下、安曇野ワイナリーが開業の日を迎えた。立ち上げにかかわったスタッフをはじめ、ワイナリーを支える関係者らが集まって、新たなスタートを祝す節目のセレモニーが開催された。

オープニングの日、樫山宏社長を筆頭としたワイナリースタッフとマスターソムリエ高野豊氏、長野県と安曇野市の行政関係者、ワイン協会関係者、創設に関わった各業者等、約70名が参列してテープカットが行われた。ワインショップ・売店では自社製品をはじめ、長野県産のワインが取り揃えられ、テイスティングも可能。県外からの観光客に対応できるお土産も充実している。セレモニーのゲストが新しい施設を見学している中、醸造家の戸川氏がブドウ畑を見つめていた。安曇野ワイナリーの畑にはダムの底からさらったという白い砂が敷き詰められている。メインのゲストハウスの前庭のようにブドウ畑が広がるが、まるで砂浜の上一面にブドウの木が整列しているように見える。「この白い砂の反射が精度の高い健全なブドウを育てるんです」。戸川氏は砂を手に取り、愛おしむようにブドウの房を見つめていた。灼しゃく熱の太陽の下、若い苗木は萎れることなく元気に葉を広げていた。この日、3000本のブドウの苗木をワイナリーに納めた志村葡萄研究所の志村富男氏もお祝いに駆けつけていた。志村氏はマンズワインで国産ワイン創世記から日本の気候土壌に合うブドウ栽培技術を切り開いてきた人物だ。「この場所の気候はとてもいいですね。水はけが良くて日照時間が長い。ブドウには最良の環境です。カベルネ・ソーヴィニヨンを作ったらいい味が出るでしょう」と志村氏はこの場所の可能性を評価した。取材陣や来客の対応に忙しい樫山社長は「長野県全体のワイナリービジネスが連携して活性化し、長野県から世界に発信できるような仕組みを皆で作っていけたら何よりうれしい」と精密機械業でグローバル展開している企業トップらしいビジョンを語った。セレモニーの会食がお開きになった頃、ようやく小林龍義支配人がつかまった。ワイナリープロジェクトスタートから半年、全力で走ってきた感想を聞いた。「ゴールじゃなくて、ようやくスタートが切れた感じです。スタッフは畑もやるしサービスもする。とにかく最初は全員で頑張りますよ」とすっかり日焼けした顔をほころばせた。

今日から、人々の熱い思いが詰まったワイナリーの歴史が始まった。

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この記事は(株)まちなみカントリープレス出版のKURAに掲載されたものです。